THANKS WOMEN'S GOLF TOUR
5th GAME

公式レポート

文・コヤマカズヒロ 写真・矢田部裕/コヤマカズヒロ

2022年2月4日
グランディ浜名湖ゴルフクラブ


選手とサポーターで作る
トーナメント

 2011〜2012年に国内男子ツアーの試合として、「とおとうみ浜松オープン」という大会が開催された。地産地消をコンセプトに掲げ、メインスポンサーを持たず、チケット収入を運営資金の柱に据えたユニークで意欲的な大会だった。
 選手自身がサポーターを集めることで出場できるという独自のシステムを採用するTWGT(THANKS WOMEN’S GOLF TOUR)の第5回大会が、「とおとうみ浜松オープン」と同じ、グランディ浜名湖ゴルフクラブで開催されるのは奇妙な縁だと言えるだろう。双方に共通するのは、選手を応援し試合を見に来ているファンに、よりフォーカスしている点だ。
 グランディ浜名湖ゴルフクラブはその名の通り、浜名湖の内側にある半島の先端に位置するゴルフ場だ。湖に浮かんでいるかのような美しい景観に、ハザードが巧みに配置された難コースで、湖からの強い風に影響を受けるシーサイドコースでもある。2004年と2019年には「リゾートトラストレディス」が開催されている。

ハードなグリーンと強風が
選手を苦しめる

 この日のグリーンは、11.4〜11.5フィート。コンパクションは24とハードな仕上がりだ。TWGT和田泰朗代表が掲げるセッティングのコンセプトは、「ステップ・アップ・ツアー以上、レギュラーツアー未満」というもの。しかし、レギュラーツアーの常連であり、「リゾートトラストレディス」にも出場経験のあるベテラン、金田久美子選手が「メジャーのセッティングより硬い」と思わず漏らすほどの高難度となった。
 さらに選手を苦しめたのが、湖から吹く強い風だ。午後からは常時5〜6m、瞬間的には10m以上の暴風が吹き、大きなパームツリーが揺れるほどだった。巧みに池(=湖)がレイアウトされ、大半のショットが池絡みになるこのコースでは、ほんの少しの曲がりやジャッジミスによって大きな代償を払うことになる。
 フォローの風を計算して、グリーン手前に運んだボールがグリーン奥まで転がってしまうこともしばしばで、自分が打った球がなかなか見つからない事もあった。風に乗れば、多くの選手が280ヤードを超えるような飛距離が出る反面、縦の距離を合わせるのに苦労していた。アゲンストではさらに難しく、3番手あげても届かないことも少なくない。
 この強風の影響を強く受けたのが、素晴らしく仕上げられた高速グリーンだ。アイアンショットが着弾するとコツンッと音がするほど硬くて速いグリーンでは、選手たちがパッティングの際に、傾斜だけでなく、その時々の風の影響も読まなくてはならない。傾斜が強く、複雑なこともあり、下りのパットがフォローの風に乗ってしまったら、どこまでも転がって何mもオーバーするシーンがあちこちで見られた。
 逆に、強い下り傾斜であっても、アゲンストの風が吹けばトロトロと転がったボールが止まってしまうこともあった。かなり短いパットであっても全く安心できない状況が毎ホール続く。特に傾斜がきついわけでもないミドルパットでも、1パットどころか、簡単に2パットで収めることすら難しい。ホールアウト後に「頭を使いすぎて、疲れました」という選手が多かったのも偽らざる心境だろう。
 出場選手65名の平均スコアはなんと「79.44」。いかに過酷なコンディションだったかがわかろうというものだ。しかし、一方で上位に食らいついていた選手たちは皆、苦戦しながらもしぶといパッティングをいくつも決めていた。1DAYトーナメントということもあり、どれだけグリーン周りでしのげるかが、勝敗を左右するカギになった。

LPGA会員選手が初参加
帯同キャディがサポート

 今回のTWGT5th GAMEでは、これまでと異なる点がふたつある。ひとつは、はじめて帯同キャディが許され、半数を超える選手が採用したこと。もうひとつは、すでにプロテストに合格したJLPGA会員である選手が出場したことだ。
 というのも、TWGTはプロテストを目指す女子選手に、実戦経験を積む機会を作るということで発足した経緯がある。シーズンオフの開催だからこそ出場が実現したわけだが、TWGT自体の認知が高まり、新たな領域に入ったことを感じさせる。
 そのうちの一人である河野杏奈選手は、2019年プロテスト合格の92期生。同期には笹生優花、西村優菜、吉田優利、西郷真央とすでにトップクラスで活躍する選手が多い。すでにレギュラツアーの経験も豊富な彼女が、持ち前の飛距離を活かして優勝してしまうシナリオも予想されたが、今回は風の影響もあって思うようなゴルフが出来なかったようだ。TWGTは、SNSで存在を知っていて、試合のないオフを利用して出場を決めたという。今季はステップ・アップ・ツアーを中心に参戦予定だ。
 河野選手の帯同キャディは、クラブコーディネーターとして有名な鹿又芳典さん。「大きなスポンサーさんの力で大規模に運営するトーナメントも、TWGTのような大会も、それぞれのスタイルを持ったプロスポーツ。ファンの方たちがいてはじめて、プロが存在するという健全な姿に良い印象を持ちました」と答えてくれた。
 出場選手中、最も注目を集めたのはベテランの金田久美子選手だ。アマチュア時代からプロの試合で活躍し、長年レギュラーツアーで活躍した金田選手の出場に驚いた人は多かったのではないだろうか。
 硬いグリーンに苦労したようだが、サポーターが近くにいるTWGTのスタイルは、レギュラーツアーに慣れている金田選手には新鮮だったようだ。
 「最初はどういう感じになるのか、少し不安もありましたが、サポーターの皆さんはとてもマナーが良くて、プレー中は気にならなかったし、逆に力になるかも。いいと思います、このスタイル。近くで見てもらう事ができて、わりとコミュニケーションも取れて、楽しかったです」とコメントしてくれた。
 競技終了後、他の誰よりも長くパッティンググリーンにいて、日没までパット練習を繰り返し行なっていたのが金田選手だった。長年、レギュラーツアーで戦っている選手の姿勢が垣間見えたシーンだった。
 選手の帯同キャディは、いろんなケースがある。プロキャディに依頼する選手もいれば、仲間や兄妹に頼む選手もいる。TWGT常連の上野陽向選手は、1回目から自身のサポーターをしている方にキャディをお願いしたという。
 その中で別格の存在感を見せていたのが、小澤美奈瀬選手の帯同キャディを務めたツアー最多勝利キャディとして知られる清水重憲さんだ。硬くて速いグリーンと強い風という状況は、全英オープンなどツアーの厳しいコンディションを戦った清水さんにどう映っただろうか。
 「最初から風が強い予報だったので、みんながいいスコアが出るわけでない。1ピン以内のパーパットが打てるようにしよう、ということでスタートしましたが、スタートホールから上手くいきませんでした」。小澤選手ともここまでの風はなかなかないよね、と話していたのだという。
 「サポーターが近くて、ツアーでのプロアマ大会のような感覚で、楽しくやらせていただきました。これからも選手には、知っている限りの経験を伝えていこうと思っています」。プレーした小澤選手は、「清水さんお願いするのはおこがましいと思いましたが、快くオファーを受けけていただいて。重みのある言葉がスッと入っていきました。終わらないでほしいと思ったほど、本当に勉強になりました」と興奮して答えてくれた。

難コースを制したのは
楠本彩乃選手

 優勝したのは、唯ひとりのアンダーパー「71」でホールアウトした楠本彩乃選手。まだ風が凪だった早い時間のスタートという幸運を活かせたこともあるが、楠本選手自身が「パッティングが良くて、長めのパーパットがすごく入ってくれてスコアにつながった。耐えることが出来た」と語ったように、多くの選手が苦しんだ中、パッティングでアドバンテージが取れたのが大きかった。タッチを一番に考え、風や細かな傾斜を考慮して、短いパッティングでも油断しなかったという。
 Team WADA!Golf Aacademyの一員であり、TWGTの常連でもある楠本選手は、サポーターの皆さんにスコアで恩返しが出来たと感謝を口にした。「はじめての優勝がTWGTで本当に嬉しいです。これを自信にしてもっと頑張りたいと思います」。今年は、プロテスト受験のほか、ティーチングプロの資格取得も参加する予定だ。

サポーターと選手の
コミュニケーション

 金田選手を長く応援しているというファンのひとりは、TWGTの存在は知っていたものの、今回はじめて金田選手が出場するということで、サポーターになることを決めたという。
 「まず、こんなに間近でプレーが見られることはないです。それだけでもサポーターになる費用は決して高くないと感じました。普通の試合はローピングしてありますからね。ホール間の移動やこうして競技後に選手と話すことが出来たりして、なんだかアメリカみたいな雰囲気がありました(笑)」と満足度は高そうだった。
 真冬での開催ということで、大会としては難しい面もあっただろう。特に選手たちは、寒さに加えて、それに伴って着衣も多め。強風に煽られて、普段ならしないようなミスも少なくなかった。しかし、メジャートーナメントを思わせるような素晴らしいグリーンの仕上がりと、なかなか経験できない強風下でのラウンドに「楽しかった」、「いい勉強になった」という声が多く聞かれた。
 厳しい局面でも楽しんでプレーできる今大会のような経験は、きっと近い将来に活きてくるだろう。

毎回サポーターの熱い応援が見られるのがTWGTの特長の一つ。

11ftを超える速さと硬いグリーンが選手を苦しめました。想定外の転がりに選手も苦笑い。

風を遮るものが無いグランディ浜名湖ゴルフクラブ。ピンもしなるほどの強風が吹き続けました。

出場選手の半数である33名の選手が帯同キャディで競技に臨みました。

初参加となったLPGA会員の河野杏奈選手は、高いポテンシャルを感じさせてくれました。

レギュラーツアーで優勝経験のある金田久美子選手も初参加。

サポーターにキャディを依頼した上野陽向選手。TWGTは取り持つ縁?

優勝請負人と言われるベテランの清水重憲キャディと小澤美奈瀬選手。

厳しいコンディションの中、ただ1人アンダーパーをマークした楠本彩乃選手。

楠本選手は自身の初優勝が縁のあるTWGTとなりました。今後も期待される選手の1人です。

サポーターになると選手の写真が入った入場証をもらうことができます。

TWGTでは、選手を支援するサポーターとふれあえる時間を毎回必ず設けています。