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公式レポート

TWGT
10th GAME

山田彩歩 圧巻の凱旋優勝

2023年12月8日 裾野カンツリー倶楽部

Text:コヤマカズヒロ Photo:矢田部裕/有原裕晶/TWGT

TWGT第10回大会は、1年ぶりにホームとも呼べる裾野カンツリー倶楽部に帰ってきた。  コロナ禍で、スポーツや芸能はもちろん、世の中の数多くのものが止まってしまった時期にTWGTは始まった。1試合1試合開催を重ねるにつれ、アスリートとファンとの関係を問い直すというコンセプトにも認知が高まり、節目の10回大会を迎えることとなった。  2023年のJLPGAプロテストでは、TWGT歴代優勝者のひとりである石田可奈子選手をはじめ、河村来未選手、政田夢乃選手の3名がTWGT出場を経て合格を果たした。経験を積んだ出場選手の中から、プロテスト合格を勝ち取った選手も増え、TWGTはスタートしたときの理念が少しずつ実現されている。  チケット代と考えると高額にも思える1口2万円というサポーターを集めるシステムも過去9回の大会で随分定着した。その魅力にハマって毎大会観戦する人もいれば、複数の選手のサポートをしている人もいる。  熱心に観戦を続けるサポーターのひとりは、「人柄のいい選手が好きなんです。勝つ選手、強い選手よりもそういう選手をサポートしたくなります」と語ってくれた。選手の魅力は単に良いスコアを出すだけではない。このシステムはプロアスリートの価値を改めて考えさせられるものだ。 今回のTWGTでは新たな試みとして「Golf Genius」(ゴルフジーニアス)というスコア管理システムが採用された。  選手が専用アプリからスコアを入力することで、ほぼリアルタイムにオンライン上のリーダーズボードにスコアが反映されるというしくみだ。入力したスコアは選手のスコアカード代わりとなるので、アテストもアプリ上で行った。  この「デジタルスコアカード」はプロの競技として初めての試みであり、選手たちもあまり馴染みがないはずだ、がそこはデジタルネイティブ世代。アプリのインストールもスムーズで、リアルタイムのスコアをサポーターも知ることができた。おそらく慣れれば紙のスコアカードよりもスムーズで、メリットが多いと感じた。今後の運用のなかでさらに改善され洗練されていくだろう。 シーズンが終わったこともあり、今回はプロテストに合格したJLPGA会員から、大城さつき選手、西畑萌香選手、山田彩歩選手の3名が参加した。  大城選手は練習ラウンドもできず、ケガの影響もあって、なかなか思うようなプレーが出来なかったが、それでもTWGT独特の雰囲気を楽しめたようだった。  「レギュラーツアーだと、ミスするとギャラリーからため息のような、残念そうな声が多いんですが。今日はミスしても、大丈夫大丈夫とか前向きな声がけで励まされて。私のサポーターじゃない人からも応援してもらえて、てっきりその選手しか応援しないんだと思っていたので、とてもアットホームな雰囲気であたたかさを感じました。だからOBを打ったりもしたんだけど、上手く切り替えられました」(大城さつき選手)  山田彩歩選手は、先だって裾野カンツリー倶楽部で行われた今年のセカンドQTに出場し、惜しくもファイナルQT行きを逃している。特にINコースでのスコアが良くなく、この大会はそのリベンジの意味合いもあった。  ちなみにセカンドQT4日間の通過スコアは7オーバー。難コース裾野ではツアープロたちもパープレーであれば上出来なのだ。いかにボギーを打たずにしのげるか、大たたきのホールを作らないかが課題になる。  一方で、ワンデイトーナメントであるTWGTでは、出来るだけスコアを伸ばしたい。序盤から攻めて、バーディーを奪っていた選手は多かったが、ボギーが出やすいため、しぶとくパーを拾う選手との明暗が別れていた。 朝は気温が低く、選手たちも厚着をしていたが、午後からは暖かくなり風も穏やかだったため、ゴルフとしては良いコンディションだった。観戦するのも快適だったろう。  しかし、それでもツアーレベルの高速で硬いグリーンに選手たちは苦しめられていた。短いパッティングでも傾斜がかかると簡単ではなく、1m前後の短いパッティングであっても、ラインをよく読み、タッチを合わせて慎重に沈めていたのが印象的だった。ボールが止まらずに、思わぬ大オーバーで返しも入らないといった光景もあちこちで見られたが、多くの場合、選手たちはそんな厳しいパットをよく決めていた。  パープレー以下のスコアで回った選手は17名。80近く打つ選手も少なくなかったQTの結果を考えると、このカテゴリーの選手たちのレベルはやはり向上している。効率的でコンパクトなスイングをする選手が多く、かつてのように個性的な動き強い選手は少ない。トレーニングを積んでいることが感じられる選手も多く、ティーチングやクラブの発達も相まって、各選手たちはそれぞれレベルアップしているのがうかがえる。  その中でも、TWGTで安定して成績を出している選手は来年以降も期待できそうだ。  今大会2位タイで、前々回も2位をマークした木村円選手は172cmという長身を活かした飛距離が持ち味。ホールによってはフェアウェイウッドでのティショットを多用するなど、マネージメント力が向上し、成績が安定してきた。  木村選手を上回る3大会連続の2位となっている諸橋愛奈選手も安定感抜群の注目選手だ。2位でもあまり悔しい素振りを見せず、コンスタントに成績を出せていることに手応えを感じている様子で、その目標はもっと先を見据えているようだ。  最終テストに何度も進出している竹内未来、笹原優美、幡野夏生といった選手も、試合中はそれぞれの課題に取り組みながら、しっかりとアンダーパーで回ってきている。選手たちが自分の実力を測ったり、課題を見つけるためにも、やはり試合でスコアを出すことに取り組むことが重要なのだろう。 優勝はJLPGA会員として出場した山田彩歩選手。スタートホールから3連続バーディーを奪うなど、前半を「32」でプレーし、苦手というINコースでもしぶとくパーを重ねて、最終の18番パー5ではきっちりとバーディーを奪った。優勝スコアの「67」は2位の選手とは2打差だった。  プロテスト合格後、ツアーに参戦するもなかなか思うような成績が出せず、今年のQTにも失敗してしまった山田選手だが、TWGTの舞台では頭一つ抜けた実力があったといえそうだ。その事実は、プロテストという壁を隔てて、決して小さくない実力差が厳然と存在することを感じさせる。  さらには、プロテストという高い壁の先にさらに高い壁がありつづける。QTを突破し、ツアーで活躍して勝利を勝ち取る。そんな困難な壁に選手たちは挑もうとしているのだ。  山田選手はプロテスト合格前の第1回大会から第3回大会までTWGTに出場している。コロナ禍でプロテストが延期になり、試合も全く行われなくなった時期に、自分たちのために試合を開催してくれたTWGTへの感謝の気持が当時から強かったという。  テスト合格後、いつかTWGTに帰ってきたいという想いがあったそうだが、今回シーズンオフということでようやく出場が実現したという。いわば、恩返しの凱旋優勝となったのだ。  コロナ禍で、選手たちに試合経験を積んでもらいたいと毎大会奮闘してきた運営スタッフにとっても一際嬉しい、節目の第10回にふさわしいドラマになった大会だった。

選手とサポーターが一体となって戦うのがTWGTのユニークなところ
JLPGA会員として参加した大城さつき
2023年の3試合すべて2位という安定した成績の諸橋愛奈
優勝を狙える位置にいたが、2つのボギーが悔やまれる竹内美来
圧倒的な飛距離で常に上位に来る木村円も優勝が期待されるひとり
アマチュアとして唯一のアンダーをマークした鈴木みなみ
安定したプレーで単独5位となった保坂萌々
毎回多くのサポーターを獲得する人気選手の幡野夏生は6位
前半を32で周り、難しいインもノーボギーで凌ぎ、最終18番のバーディで優勝を決めた山田彩歩
アプリ上でスコアの入力とアテストまで行うデジタルスコアカードを本格導入
1年ぶりの開催となった裾野カンツリー倶楽部には68名の選手が集まった
3番ホールに設けられたイーグル賞は新井里茄
最少ボギー賞は唯一のノーボギーだった山田彩歩
最多バーディ賞は6バーディを奪った高山佳小里
3試合のサポーター獲得数が1位のMOST ATTRACTIVE PLAYERは中野なゆ
3試合の総合ポイント1位のPLAYER OF THE YEARは諸橋愛奈

TWGT 10th GAME RESULT
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https://x.gd/ZZ5oI

TWGT 11th GAME 2月9日開催!

TWGT第11回大会が、2024年2月9日(金)に静岡県浜松市のグランディ浜名湖ゴルフクラブにて開催されます。すでに選手のエントリー及びサポーター登録が始まっていますので、公式ホームページをご覧ください。

https://www.twgtour.com/

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